デジタルシネマ
コンピュータの発達と共に、映画製作の過程でも編集作業や特殊効果をデジタル技術を利用するようになり、光学的に撮影した映像フィルムをデジタル・データに変換して、デジタル処理による動画の加工後に再びフィルムに戻すキネコの作業が不可欠となっている。
それならば、いっそ撮影と上映もデジタル化する事で相互変換の工程を省き、時間とコスト、その他アナログが抱えるあらゆる制約を払拭してしまおうと言うのがデジタルシネマの基本構想である。まず技術的な背景について説明する。
化学的な反応とその粒子サイズに制約を受ける銀塩フィルムに比べて、CCDやCMOS撮像素子といった電子部品は20世紀末から急速に進んだ微細加工技術の恩恵を受けて高密度画素と同時に感度が高くダイナミックレンジも広くなっている。
デジタルシネマの利点
すでに商業映画作品の殆どがコンピュータで何らかの画像処理を行っており、従来はフィルムで撮影した画像をフィルムスキャナで1コマずつデジタル・データに変換していたが、その過程で画像データの劣化が避けられなかった。
一方、デジタル機材で撮影されたデータはコンピュータでの加工に適している。デジタル撮影により、撮影フィルムの現像・スキャンの手間とコストが省かれ、さらに即時に再生確認ができる利点がある。また、従来のフィルムによる撮影では無駄になるフィルムが多く、カメラの起動時にフィルムが安定した速度に達するまでのコマやフィルムマガジンを脱着するだけでも前後のフィルムが無駄になった。
更に、カメラに装着できるフィルムの長さに制約があり、連続した長時間撮影が出来なかった。デジタル撮影機材の導入により、それらの問題が解決された。デジタル上映によって、上映用フィルムの原価やデュープ代、輸送費(デジタルならデータ回線による転送も可能である)や保管費などのコストが削減される上、フィルムの劣化や損傷も無く製作者の意図に限りなく近い状態の上映が可能である利点がある。